カクテルの起源をたどる、小さな読み物
名前だけ知っているカクテルにも、実はちょっとした背景や物語があります。
このシリーズでは、カクテルが生まれたきっかけや名前に込められた意味、つくり方の基本などを紹介していきます。
知ればきっと、その一杯がもっと楽しくなるはずです。

MOJITO
夏の定番カクテル、モヒート。 清涼感のある味わいの裏には、ちょっと意外な名前の由来と、古い歴史が隠れています。 今回はその起源と、小さな物語をご紹介します。
薬からカクテルへ。モヒートの物語
その名前の由来には諸説ありますが、ひとつにアフリカのブードゥー教に登場する「mojo(モホ)」という言葉から来ているという説があります。スペイン語圏では「魔力」や「お守り」、「軽い魔法」といった意味もあるそうで、この涼やかな一杯には、人を惹きつける不思議な力が宿っているのかもしれません。
実際、あのヘミングウェイもモヒートの虜だったひとり。
彼が通ったハバナのレストラン「ラ・ボデギータ・デル・メディオ」には、今もこんな言葉が壁に刻まれています。
我がモヒートはボデギータで、
我がダイキリはフロリディータで。
生涯飲み続けたというから、モヒートの魔力は本物です。
モヒートの起源は、16世紀のカリブ海にまでさかのぼります。
当時、英国女王エリザベス1世から“公認”を受けていた海賊、フランシス・ドレーク。彼の部下であるリチャード・ドレークがつくったとされる「ドラケ」という飲み物が、モヒートのルーツのひとつとされています。
材料は、まだ粗く蒸留されたサトウキビ酒「アグアルディエンテ」と、壊血病予防のためのライム、薬草としてのミント。
薬のようにして飲まれていたこの一杯が、やがて時代を越えて洗練され、今のモヒートの原型になっていきました。
さらに1920年代、アメリカが禁酒法に揺れていた時代。
お酒を求めてキューバへ渡ったアメリカ人たちは、現地のレストランで「ミント・ジュレップ」をベースにしたラム入りのモヒートを好んで飲むようになり、ハバナやジャマイカのバーでも人気に火がつきました。
暑い日に飲むと、なんともいえない清涼感。
だけどその奥には、遠い海の物語と、時代の変化をくぐり抜けた歴史が隠れています。
夏にぴったりなこの一杯、今日はその由来を思い出しながら味わってみてはいかがでしょうか?
モヒートの基本のつくり方(1杯分)
【材料】
- ホワイトラム:45ml
- ライム:1/2個(くし切り or カット)
- ミントの葉:10枚ほど
- 砂糖 or ガムシロップ:小さじ2
- 炭酸水:50ml
【つくり方】
- グラスにカットしたライムと砂糖(またはシロップ)を入れる
- ミントの葉を加え、つぶしすぎないように軽く押す
- ホワイトラムを注ぐ
- グラスにクラッシュドアイスをたっぷり詰める
- 中身を軽く混ぜて、味をなじませる
- 炭酸水を50ml注ぎ、やさしくステアする
- ミントを飾って完成!