切り絵作家・成田一徹 作品集『NARITA ITTETSU to the BAR』完全改訂版
バーの世界をモノクロームで切り描いた271作品
バーの魅力をモノクロームの世界で表現した切り絵作家、成田一徹氏。彼の作品は、多くのファンを魅了し、圧倒的な支持を集めました。その成田氏の作品を収録した『NARITA ITTETSU to the BAR』は、2014年に初版を発行、たちまち売り切れとなりました。再版を望むファンの声も多く、6年の歳月を経て、株式会社北澤企画事務所(BAR TIMES / BAR TIMES STORE運営)が、23点の作品を新たに加え、2020年に完全改訂版として発行しました。
成田氏は、これまでバーを描いた作品を数多く手がけてきました。そしてバーテンダーも自分の店を切り絵にしてもらうのが憧れでありました。彼はバーをこよなく愛し、バーに愛された人生でした。
しかし、雑誌等でいくつもの連載を抱えるほど多忙であった成田氏は、2012年10月、脳溢血により63歳の若さで突然この世を去りました。
まるでそこに身を置いているかのような情景が広がる
今、改めてページをめくってみると、ゆっくりと静かな時間が流れるバー、喧騒に包まれる賑やかなバー、バーテンダーの特徴を捉えたシェーキング、こだわりのあるバックバー、まるでそこに身を置いているかのような錯覚を覚えます。行ったことのあるバー、聞いたことのあるバー、知らなかったバー、今日はどこでグラスを傾けようか、一ページずつめくってお気に入りのバーを探すのもきっと楽しいことでしょう。
本書は、初版に加え新たに23点の作品を追補、総数271点を収録。店舗情報も更新した完全改訂版。モノクロームだけど温かい、バーの素晴らしさを再確認できる一冊です。
『NARITA ITTETSU to the BAR』完全改訂版の発売に寄せられたコメント
成田さんの切り絵を世界に類のない表現と尊敬し、バー仲間でもあった私は、氏の没後に作品集制作の依頼を受けて使命感をもち、決定版にしようとした。大きな版型、ハードカバー、ゆったりと、しかし網羅した作品構成、付随資料の精度。考えたのは、成田さんの厳しく洗練された白黒だけの世界ゆえ、本も白黒だけ、グレーも使わないことだった。でき上がったものは満足できたが、成田さんへのプレゼントのつもりで、真っ赤なトレーシングペーパーの帯を巻いて、紅一点を添えた。このたびソフトカバーで再刊されるのはたいへんうれしい。(グラフィックデザイナー/作家 太田和彦氏)
突然の訃報に接してから早くも8年が経ちました。同じ昭和24年生まれ、しばしば酒席を共にした身として、いまだにどこかのバーのカウンターでひょっこりお目にかかれるのではという気がしてなりません。そんな思いに駆られるのも、自宅に飾られている切り絵のせいでしょうか、全国各地のバーで成田さんの切り絵に遭遇するからでしょうか。そこには名店が醸し出す心地よい緊張感と安らぎ、ゆるやかに流れる時間、そして極上の一杯があります。作品がある限り成田さんは永遠に生き続けることでしょう。このたびの『NARITA ITTETSU to the Bar』完全改訂増補版を片手に、もう一度成田さんと一杯やるのが待たれてなりません(サントリースピリッツ株式会社 名誉チーフブレンダー 輿水精一氏)
成田一徹さんの『NARITA ITTETSU to the BAR』再版(完全改訂増補版)が発売される。成田さん没後、閉店したバーも多く時の流れを感じる。「今度一緒に」と約束していた神戸のバーも今はない。しかし店は閉まってもバーテンダーの師弟関係は脈々と続いている。そんなことに思いをはせ、この本を開いて傾ける一杯は至福の時間だ。(漫画原作者 城アラキ氏)
著者紹介/成田一徹(なりた いってつ)
1949年神戸生まれ。サラリーマン生活のかたわら切り絵に目覚め、88年に上京。切り絵作家として独立しました。BARの空間をモチーフにしたモノクロームの切り絵をライフワークとしつつ、新聞、雑誌、書籍を中心に、街の風景や市井に暮らす人々、職人の仕事や生き様など多彩なテーマで作品を発表。エッセイストとしても、軽妙で味わい深い文書にファンも多く、各地で個展、グループ展を多数開催しました。講談社フェーマススクールズ・インストラクターも長くつとめた。2012年10月、脳出血で急逝。
著書に『to the Bar 日本のBAR 74選』 (朝日新聞社)『カウンターの中から』(クリエテ関西)『東京シルエット』(創森社)『The Cigar Story-葉巻をめぐる偉人伝-』 (集英社)『成田一徹の切り絵入門』 (誠文堂新光社)『あの店に会いに行く』(中央公論社)『神戸の残り香』 『新・神戸の残り香』(神戸新聞総合出版センター)『NARITA ITTETSU to the BAR』(神戸新聞総合出版センター)など多数。